雑談

【ネタばれ辛口レビュー】「ドラえもん月面探査記」がイマイチ心に刺さらなかった3つの理由

 

先日、子供と一緒に映画「ドラえもん月面探査記」を見てみました。

実は僕はドラ映画の大ファンで、毎年欠かさず見てるんです。

基本は毎年映画館に行くんですが、今年は見逃してしまいまして、つい先日DVDで視聴しました。

 

やっぱりドラえもん映画はいいですね!!

子供と一緒に、楽しく見させてもらいました。

ただ、いい映画だったんですが…もう一息!!と言う印象も持ってしまったのもまた事実です。

なんというか…残念ながら心に刺さらなかったんですよね。惜しい!!って感じでした。

 

というわけで、今回はドラえもん月面探査機のレビューをしたいと思います。

なぜ、この映画が僕の心にイマイチ刺さらなかったのか…?

ネタバレ&辛口で掘り下げていきたいと思います。

「人間の想像力」というテーマをサポートするエピソードが少ない

今回のドラえもんが心に刺さらなかった理由のひとつ目…それは、『テーマをサポートするエピソードが少ない』点です。

まずは、この映画のテーマから振り返ってみましょう。

今回のドラえもんのテーマは、「人間の想像力は素晴らしい」でした。

今回の脚本は、辻村深月さんと言うことで、いかにも文豪というか小説家らしいテーマでしたね。

 

今回の映画では、『異説クラブメンバーズバッジ』が人間の想像力の象徴として描かれています。

のび太達が想像力を働かせ、月にウサギの国を作っていく。

そして物語が進み、ノビットが作った定説バッジ(異説クラブバッジのあべこべ)で月のウサギたちがカグヤ星に乗り込み、カグヤ星の黒幕ディアボロ(人工知能)を倒す。

月にウサギの王国を作っていくワクワク感と、想像の産物(ウサギたち)が現実の敵を倒すというストーリーで人間の想像力の大切さを伝えているわけですね。

 

今回は辛口レビューですが、一応ちゃんと制作側の意図は汲み取ったつもりです。

でもですね、やっぱり映画の内容とテーマがあんまりマッチしてない印象を受けちゃうんですよね。

例えばウサギの王国を作っていくシーンですが、あまり想像力を働かせたっぽくない印象を受けるんです。

「月にウサギがいる」とか「餅つき」とかは誰もが知っている異説ですからね。想像力を働かせて考え出した設定ではないです。

また、王国の作り方もドラえもんの映画でよくやる内容で、『人間の想像力』という今回のテーマ特有の描写が薄いんですよね。

なので、本作のテーマが『人間の想像力のすばらしさ』って物語の後半で判明しても、「ん?」って思っちゃうんです。

ポッと出というか、急に出てきたテーマって言う印象を受けてしまいました。

 

もっと、想像を働かせて月の王国を作っていく描写が必要だったように思います。

そういう意味では、日本誕生の、『アヒルと馬を掛け合わせてペガサスを作る』といったエピソードの方がよほど想像力らしいエピソードですよね。

こんな感じで、複数の道具を組み合わせて、のび太らしい「思いもよらぬ道具の使い方」で王国を作り上げていくようなストーリーが必要だったように思います。

前半部分で「人間の想像力ってすごいな…」って思わせられなかったのが、テーマが軽く感じてしまった一番の原因でしょう。

 

あと、黒幕のディアボロ(人工知能)の扱いも微妙でした。

ドラえもんの決め台詞、

「想像力は未来だ!想像をあきらめたときに破壊が生まれるんだ!」

が、ちょっと説得力がなかったです。

『想像力が未来を作り出した』をサポートするエピソードがやっぱり薄いです。ガリレオの地動説の話とか、なんとか伏線を貼ろうとしたのは分かるんですが、ちょっとこじ付け感が強かったです。

ストーリーのメイン部分に、想像力があるからウサギの国が発展したって言うエピソードがなかったのが痛かったですね。

『想像をあきらめた時に破壊が生まれる』もエピソードが薄いですね。

今回は、黒幕のディアボロが破壊の化身的な位置づけになっています。転じて、ディアボロ=想像力の欠如の象徴として描かれています。

ですが、想像力の欠如がなぜ破壊につながるのかがうまく描かれていません。想像力の欠如から、なぜディアボロが生まれ、破壊を繰り返すのか、これをしっかり描く必要があったように思います。

この辺のトスが弱いので、残念ながら、『想像力の欠如=悪』というのが後付けの設定という印象を受けてしまいました。

あと、そもそも、ディアボロ(というかAI)を想像力の欠如とみなすのには無理があります。僕がエンジニアだからかもしれませんが。この辺は詳しく後述します。

 

テーマが心にひびかなかったというのが、本作の一番の残念な点でしたね。

テーマの伏線を用意しようとする意図は分かるんですが…物語の中核とテーマの乖離を感じてしまいました。

「テーマは後付けで加えたのかな?」という印象になってしまったのが残念です。

言いたいことを詰め込みすぎて、ちょっと押し付けがましいのが残念

また、「人間の想像力は素晴らしい」というメインテーマ以外のも、細かなテーマが乱立していたのも気になりました。

例えば、

  • ルカと親とのエピソード
  • 友達は仲間
  • 限られた時間だからこそ全力で生きられる

とか、色々と脚本家の言いたいことが詰め込められすぎている印象を受けました。

 

これだけたくさんメッセージがあると、やはり各サブテーマの掘り下げ不足を感じました。

メッセージを裏付けるストーリーが乏しいので、いきなりメッセージが登場し、押しつけがましい印象をうけてしまいました。

 

例えば、ルカ達が最後で永遠の命を捨て、限りある時間で生きることを選択するんですが、のび太達のどこを見てそう思ったのかがあいまいで、感情移入しづらくなってしまっていました。

しかも、テーマ的にやや難しいので、特に子供には理解されたのかどうか疑問が残ります。

のび太との友情エピソードも同様です。ルカ達が地球人と交わらずに1000年生きてきたことは語られていますが、具体的にどう寂しい思いをしたのかのエピソードがなかったですね。こちらも感情移入しづらい展開でした。

映画としては、伏線自体は結構張り巡らされていたんですけどね…

  • ノビットのあべこべ発明品→異説バッジのアベコベが登場とか
  • 忘れな草登場→エピローグでカグヤ星人に使ってルカ達を異説にする
  • カメの甲羅が宇宙一固い&足が速い

とか、色々と伏線は多かった割に、肝心のサブテーマの伏線があまりなかったですね。

 

正直、これらのサブテーマはバッサリ切ってしまっても良かったんじゃないかなと思いました。

言いたいことを詰め込みすぎると、各テーマに割ける時間が減るので、どうしてもメッセージが軽くなっちゃいますからね。

この詰め込み感、『緑の巨人伝』でも感じたんですよね。

テーマはとても良かったんですが、色々話を詰め込みすぎて傑作になり切れなかったっていう印象でした。

制作陣のドラえもんへの思い入れが強すぎるんでしょうかね…

もうちょっとバッサリ絞って欲しかったと個人的には思います。

AI=想像力の欠如はちょっと…ドラえもんでは科学を否定しないで欲しかった

僕がエンジニアだからかもしれないですが、今回のドラえもんで一番大きな違和感はここでした。

今回の映画の黒幕はカグヤ星のディアボロというAI(人工知能)。

AIが想像力の欠如の象徴として扱われ、ディアボロを倒してカグヤ星が解放されるというのがメインストーリーです。

ですが…やっぱり「AI=想像力の欠如」とするのはエンジニアとして違和感があります。

もしかしたら、普通の人はあまり気にならないかもしれませんが。。

 

多分、脚本の意図としては、「AIの存在→人々がAIの言いなりになる→想像力の欠如→AIは悪」っていう論理なんでしょう。

最近のAIブームで、AIに対する警鐘が色々と言われてますしね。

AI技術が発展すると仕事がなくなる!とか。

こういった時代の流れを反映したかったのは理解できるんですが…ちょっと安直かなと。

 

実は僕の本職はエンジニアで、AI技術に関してはそこそこ造形が深いんです。

で、実際にAI技術に携わる者の視点からすると、AIなんて人間の努力と工夫・想像力の塊なんですけどね…

だからどうしても今作のテーマに違和感があるんです。

 

もっと言うと、ドラえもんという漫画は科学技術の発展を絶対に否定しない、というのが僕の認識だったんですよね。
だから、AIを否定する(ように感じる)今回のストーリーは違和感が大きかったです。

だって、ドラえもんは22世紀の科学技術が作り出したネコ型ロボットですよ!?

科学を否定することはドラえもんを否定することですからね。

ドラえもんだってAIです。なので、ディアボロAI = 想像力の欠如 = 悪と言う構図は、やっぱり納得できません。

もちろん、ドラえもんの映画では、自然破壊などの科学の負の側面に焦点を当てたりはします。(雲の王国とか緑の巨人伝とか。)

でも、「だから科学技術を捨て去ろう!」って結論になったドラ映画は、今まで一本もなかったはずです。

自分たちの進む道を見直して、正しい未来を自分たちの手で作っていこう!っていう方向性のはずなんです。

新・日本誕生が一番いい例ですよね。歴史を変えようとするギガゾンビに対して、人類の発展の重みを叩きつける!っていう。

あれこそが、ドラえもんの根本のメッセージだと僕は思ってるんです。

 

ディアボロというAIを黒幕にするにしても、AI自体を否定する必要はなかったんじゃないかなぁって思うんです。

個人的には、やはり科学技術を否定する立場の今回のテーマは、ドラえもんの映画としては違和感があります(これは個人的な感情ですが…)。

今回のドラえもん映画も、やはり未来と科学に希望を抱くストーリーであってほしかったなぁと思いました。

まとめ

今回は、ドラえもん月面探査記を辛口レビューで振り返ってみました。

「何を大の大人が真剣になって子供向け映画を語ってるんだ…」って思ったかもしれませんね(笑)

でも、子供も大人も楽しめるのがドラ映画のいいところだと思うんですよね。

思えば、僕も子供のころはドラえもんを見て育ちました。

毎年の映画はとても楽しみでしたし、『恐竜』とか『宇宙小戦争』とかはビデオが擦り切れるほど見返しました。

そんな僕が、大人になって、子供を連れてまたドラえもん映画を見る…

制作陣もそれは絶対わかっていて、子供向け映画なのに大人も楽しめるような伏線・テーマを毎度毎度ぶち込んでくるんです。

僕はその「大人を感動させるための要素」が楽しみで、いつも本気でドラえもん映画を見ているんですね。

 

今回の映画、色々辛口なレビューを書きましたけど、それは僕がドラえもんが大好きな証拠。

もちろん、今回も楽しんで見させていただきましたよ♪製作者の皆様、本当にありがとうございました!!

来年は、『のび太の新恐竜』。今年こそ必ず映画館に見に行きます!

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